目を潤し、ゴミやほこりを洗い流してくれる涙。目を守るためには涙が欠かせません。
しかし、涙があふれる、スマホやテレビを見ていると涙がたまってくる、風が吹く度に涙が出る、などの症状がある場合は目に何らかの異常が起きている可能性があります。
今回は目に涙がたまる原因や症状、治療法についてご説明します。
目次
- ■涙の大切さ
- ◎涙は目を守り、目に栄養を送り届ける大切な存在
- ■涙の流れの仕組み
- ◎涙は涙腺→涙点→涙道→鼻腔へ流れていく
- ■流涙症(涙目)の原因
- ◎「涙が多く出る」と「涙の流れが悪くなる」が主な発症原因
- ■涙が多く出る原因
- ◎目に入った異物や目への刺激で涙が出る
- ■涙の流れが悪くなる原因
- ■涙道閉塞とは?
- ◎加齢などの原因により涙道が詰まることで流涙症がひき起こされる
- ■流涙症の症状
- ◎以下のような症状がある方は流涙症の可能性があります
- ■涙道閉塞による涙嚢炎の症状
- ◎以下のような症状がある方は涙道閉塞による涙嚢炎の可能性があります
- ■流涙症の治療法
- 【涙がたまる、目やにが多いなどの症状があるときはお早めにご相談ください】
■涙の大切さ
◎涙は目を守り、目に栄養を送り届ける大切な存在
涙は目の表面を覆うことで外界の刺激から目を守っています。目を守ると共に、涙に含まれる水分、タンパク質、糖分、電解質などの成分により、目に栄養を送り届けています。
涙には抗菌物質も含まれており、涙が出ることで目についたゴミやほこりを洗い流しながらバイ菌をやっつける働きも持っています。
■涙の流れの仕組み
◎涙は涙腺→涙点→涙道→鼻腔へ流れていく
涙は、上まぶたの外側あたりにある涙腺(るいせん)から分泌され、目を潤します。
目を潤した涙は瞬き(まばたき)をする度に上下のまぶたの内側(目頭)にある涙点(るいてん)という2つの小さな穴に入り、涙の通り道である涙道(るいどう)に流れ込んでいきます。
涙道を通った涙は最終的に鼻腔に流れ出ます。
■流涙症(涙目)の原因
◎「涙が多く出る」と「涙の流れが悪くなる」が主な発症原因
過剰な涙によって目が潤いすぎたり、涙が止まらない状態を「流涙症」と言います。流涙症は一般的に涙目(なみだめ)とも呼ばれます。
流涙症が起きる主な原因は「涙が多く出る」、および、「涙の流れが悪くなる」です。どちらか一つの原因がある、または、両方の原因が重なった場合に流涙症を発症します。
■涙が多く出る原因
◎目に入った異物や目への刺激で涙が出る
目は、ゴミやほこり、バイ菌、花粉などの異物が入ると涙で洗い流す機能を持っています。以下のような要素がある場合、目の表面を洗い流そうとして涙が多く出ることがあります。
・結膜炎(バイ菌を洗い流そうとして涙が多く出る)
・花粉症(花粉を洗い流そうとして涙が多く出る)
・逆まつげ(内反症:ないはんしょう※)(まつげが目に当たる刺激により涙が多く出る)
(※)内反症・・・本来は外側に向いているまつげが内側に向き、毛の先端が
眼球にふれてしまっている状態。「逆まつげ」「逆さまつげ」とも。
■涙の流れが悪くなる原因
涙の流れが悪くなる主な原因は涙の通り道(涙道)が詰まる「涙道閉塞」です。涙道閉塞のほか、結膜や瞼の病気で涙の流れが悪くなることも。
- 涙道閉塞や狭窄により目に涙がたまってしまう
涙は涙腺から分泌されて目を潤した後、目頭にある上下の2つの涙点に入り、涙道を通って鼻腔へ流れ出ます。
しかし、何らかの原因(後述)によって涙道が細くなったり閉塞(涙道が詰まる)が起きると涙の流れが悪くなり、目に涙がたまってしまうことがあります。
②結膜や瞼の病気で目に涙がたまることも
涙道閉塞のほか、結膜や瞼の病気で目に涙がたまってしまうことがあります。
・結膜弛緩症(けつまくしかんしょう)
加齢などが原因で目の組織の水分が減り、結膜にシワができる病気。結膜弛緩症になると結膜のシワによって目に涙がたまりやすくなる。
・眼瞼内反症(がんけんないはんしょう)
加齢などが原因で目の周りの筋肉がゆるみ、まぶた全体が内側(眼球の方向)に向いてしまう病気。まつげが内側に向くものを内反症、まぶた全体が内側に向いてしまうものを眼瞼内反症と呼ぶ。眼瞼内反症になるとまぶたのゆるみによって目に涙がたまりやすくなる。
・眼瞼外反症(がんけんがいはんしょう)
加齢や顔面神経の麻痺、まぶたの手術後の傷(瘢痕:はんこん)などが原因で下まぶたが外側に反り返ってしまう病気。眼瞼外反症になると下まぶたのゆるみによって目に涙がたまりやすくなる。
■涙道閉塞とは?
◎加齢などの原因により涙道が詰まることで流涙症がひき起こされる
涙は目頭の上下にある2つの小さな涙点に流れ込み、涙道を通って最終的に鼻腔へ流れ出ます。涙道は涙点に近い順から涙小点、涙嚢(るいのう)、鼻涙管(びるいかん)で構成されています。
涙道を構成する上記のうち、一つでも詰まってしまうと(=涙道閉塞)涙の流れが悪くなり、目に涙がたまってしまう「流涙症」をひき起こします。
涙道閉塞を起こす原因はさまざまです。加齢で涙道が狭まることによるもののほか、蓄膿症や顔面骨折などが原因で涙道閉塞が起きる場合もあります。アレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎が涙道閉塞の原因になるケースも。
■流涙症の症状
◎以下のような症状がある方は流涙症の可能性があります
流涙症になって目に涙がたまると以下のような症状が現れ始めます。
・涙があふれる
・涙がこぼれる
・目やにが治らない
・涙で目が曇る
・涙でメガネが曇る
・こぼれた涙で目の周りの皮膚がただれる・擦り切れる
■涙道閉塞による涙嚢炎の症状
◎以下のような症状がある方は涙道閉塞による涙嚢炎の可能性があります
涙道閉塞を起こして涙の流れが悪くなり、無治療で放置すると涙道の一部である涙嚢に炎症が起き、涙嚢炎(るいのうえん)を発症した場合も以下のような症状が現れることがあります。涙道閉塞を放置して涙嚢炎になると涙管チューブ挿入術の治癒率が下がります。
・涙とともに目やにがたまりやすい
・目頭を押すと涙点から膿が出てくる
・目頭や目頭の周辺が赤く腫れる
・目頭の辺りに強い痛みを感じる
■流涙症の治療法
目に涙がたまる流涙症をひき起こす主な原因は涙道閉塞です。涙道閉塞を解消することで、涙道閉塞によって起きる流涙症の改善につながる事が多いです。
①涙道閉塞の治療法
涙道閉塞は点眼薬や内服薬ではほぼ治せません。原則として、涙道閉塞を解消するには手術が必要になります。
涙道閉塞の手術は主に以下の2つがあります。
・涙管チューブ挿入術
閉塞した涙道の部位を細い内視鏡で観察して開放し、涙点から鼻腔にチューブを挿入します。チューブを挿入した状態で約2~3ヶ月間過ごしていただき、閉塞していた涙道が正常な状態に戻ったことを確認できたらチューブを抜去します。涙道閉塞を放置して涙嚢炎になると治癒率が下がります。
{涙道内視鏡システムを採用しています}
当院では涙道内視鏡を用いて涙管チューブ挿入術を行っています。
従来の涙管チューブ挿入術は医師の目視と勘に頼る部分が多く、術者である医師の技量によって手術の精度に差が出やすいことが問題点でした。
手術時に涙道内視鏡を用いることで目にたまった涙を排出する涙道の内腔全体を3CCDカメラで観察でき、手術の安全性・正確性を高められます。
涙管チューブ挿入術は局所麻酔で行われます。所要時間は15分程度です(※)。
(※)患者様や涙道の状態によって所要時間が異なります。
・涙嚢鼻腔吻合術(るいのうびくうふんごうじゅつ)
涙嚢より外側で涙道閉塞が起きているケースでは、涙嚢と鼻腔のあいだに涙の新しい通り道を作る涙嚢鼻腔吻合術を行うことがあります。
涙管チューブ挿入術では改善が期待できない場合や涙道閉塞を繰り返しているケースも涙嚢鼻腔吻合術の適応対象となります。
この手術は全身麻酔が必要になるケースもある為適切な連携病院に責任をもってご紹介致します。
②涙道閉塞以外の原因でひき起こされる流涙症の治療法
結膜弛緩症、眼瞼内反症、眼瞼外反症など、涙道閉塞以外の原因で流涙症がひき起こされている場合は以下の治療法により、流涙症の改善につなげます。
<結膜弛緩症>
・点眼薬による治療
・ゆるんだ結膜を伸展する手術
<眼瞼内反症>
・埋没法や切開法による手術
<眼瞼外反症>
・切開や切除によるまぶたの垂直・平行方向の矯正手術
【涙がたまる、目やにが多いなどの症状があるときはお早めにご相談ください】
目に涙がたまってしまう流涙症は涙道閉塞が原因でひき起こされるケースが多いです。涙道閉塞は点眼薬や内服薬で治すことが難しいため、手術が必要になります。
流涙症を「年だから」「単なる涙目だから大丈夫」と言って放置していると、涙道閉塞により発生した涙嚢炎が重症化して目の下の頬のあたりまで顔が腫れたり、目頭から大量の膿が出る、熱が出る、などの症状が現れることもあります。涙道閉塞を放置して涙嚢炎になると治癒率が下がってしまいます。
涙がたまる、涙があふれる・こぼれる、風があたる度に涙が出る、目やにが多い、などの症状があるときは放置せず、当院までお早めにご相談ください。
宮田眼科
院長
宮田 健太郎
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